事業継承した企業の声

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【平山運輸】「資金的体力を強化したかった」ー那須塩原地域を支える企業の責任感とは。

有限会社 平山運輸
平山美明氏 インタビュー

栃木県那須塩原市―全国屈指の生乳生産地として知られるこのエリアに拠点を構える「有限会社平山運輸」は、冷凍・冷蔵・ドライ品の一般貨物運送を手がける物流企業だ。創業以来、乳製品を中心とした定温輸送を得意とし、地域と共に歩みを重ねてきた。高度経済成長期から、震災、燃料高騰、そして現在の物価急騰という幾多の波を乗り越えながら、限られた人員で安定したオペレーションを継続してきた平山運輸。今回は取締役の平山美明氏に、創業からの歩み、業界を取り巻く変化、そして今後の展望について話を伺った。


―まずは御社の事業概要と地域との関わりについて教えてください。

当社は、栃木県那須塩原市(旧・黒磯)を拠点に、冷凍・冷蔵・ドライ品を対象とした一般貨物運送事業を展開しています。創業以来、主に乳製品を中心とする定温輸送に特化しており、関東から関西方面までの長距離輸送に対応しています。

この地域は本州でも有数の生乳生産地で、栃木県内では特に酪農が盛んです。那須塩原は冷涼な気候や豊富な自然に恵まれ、観光地としても知られる一方で、農業・酪農・食品加工業など、地域経済を支える産業が根付いています。私たちの事業も、そうした地域インフラの一翼を担ってきたと自負しています。

冷凍・冷蔵分野での信頼とノウハウを活かし、効率的な車両運用と品質管理を強みとして継続しています。

(写真) 本社には輸送車両が20台以上並ぶ

― 創業の経緯と、これまでの成長についてお聞かせください。

もともと先代が物流業界とのご縁がありました。出資の協力も得て、運送会社として法人を立ち上げたのが始まりです。創業当初から冷凍・冷蔵輸送を主軸にしていたわけではなく、ドライ品や地場の乳製品配送からスタートし、徐々に長距離や冷蔵品へと事業の幅を広げていきました。

特に成長を感じたのは、官公庁などでギフト贈答品の需要があった時代です。当社では乳製品の詰め合わせ作業を社内で行い、そのまま輸送まで一貫して担っていました。長距離輸送の案件もいただけるようになり、北陸や関西方面への定温輸送に本格参入したのが大きな転機となりました。

―これまでで最も困難だった時期はどのようなものでしたか?

代表的なのは2011年の東日本大震災後です。物流全体の需要が急激に冷え込み、特に食品関連は大打撃を受けました。そして現在のウクライナ情勢による物価上昇と燃料費の高騰と、たびたび外的要因による打撃を受けています。特に現在の状況は過去のどの局面よりも影響が大きく、燃料価格の高止まりに加え、車両コストや人件費の上昇が重なっています。

当社でも従業員の維持や車両の更新など、資金的な重圧は年々大きくなっていました。「物流を止めない」という使命のもと、なんとか輸送を続けてきましたが、いずれは体力的にも限界が来ると感じ、次の一手を考える必要に迫られていました。

(写真)納車の様子

― M&Aを検討した背景と、テイクオーバーグループを選んだ理由は何だったのでしょうか?

M&Aを意識し始めたのは、単純に「資金的な体力を強化したい」という明確な理由からでした。車両の更新、ドライバーの確保、燃料費対策―これらに柔軟に対応するには、単独では限界があると判断しました。ご縁をいただいたのが山田&パートナーズさん経由でのテイクオーバーグループを紹介されました。

他社との比較も行いましたが、債務を含めた事業承継に対して、明確な体力と実行力を示してくれたこと、そして何よりも山崎社長のお人柄が決め手でした。こちらの事情をしっかり受け止めてくれたことが印象的で、グループ入りを決断する後押しになりました。実際に参画してみて感じたのは「親会社がある」という安心感です。業務面でのシナジー効果には、まだまだのびしろがあります、社内にも前向きな空気が生まれつつあります。

―今後の展望と、業界全体に対する見通しをお聞かせください。

まずは目の前の経営安定化を図りつつ、2024年問題を乗り越えてグループとして物流網をどう広げていけるかが鍵だと考えています。その中でこれまでにはなかった営業機会やノウハウ連携にも期待しています。また、個人としては「責任を果たす」という姿勢を大切に今後も事業を通じて地域や従業員に貢献していきたいと思っています。中小物流業者が次々に淘汰される時代のなかで、私たちが生き残る意義を形にしていきたいです。


燃料費の高騰、労働力不足、規制強化―物流業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。しかし、平山運輸は「変わることを恐れない柔軟さ」と「地域への責任感」を武器に、次なるステージに向けて着実に歩を進めている。平山氏が語るように、2024年問題を乗り越えた先には、業界再編のチャンスが訪れる可能性がある。生き残った企業が市場を主導するフェーズにおいて、平山運輸がグループの物流インフラとして、さらなる存在感を発揮する日はそう遠くないかもしれない。地方発・次世代型物流企業の可能性を拓く平山運輸の今後に注目したい。


■会社概要

会社名:有限会社 平山運輸
所在地: 〒325-0017 栃木県那須塩原市黒磯6−61
電話番号: 0287-62-7827
事業内容:冷凍・冷蔵・ドライ品の一般貨物運送(主に乳製品を中心とした定温輸送)

■株式会社テイクオーバーについて

「価値ある事業をなくさない」をコンセプトに、日本全国における中小企業の事業承継問題に真正面から取り組む、承継支援・経営再生会社です。後継者不在や経営の停滞により存続が危ぶまれる企業を対象に、実質的な承継・再生の実行者として介入し、企業価値の維持・向上、ひいては地域経済の活性化に資することを目的としています。承継後は再生チームが経営を担う当事者として、グループの知見や人材・資本力を用いて、企業が本来持つ潜在的な価値を引き出し、持続的な成長へと導きます。価値ある企業を一つでも多く、後世に繋いでいく。そのひとつの想いで、今後も活動を続けてまいります。

〈事業内容〉
飲食、食品製造、ペット、アパレル事業等
中小企業の株式の取得による事業承継
経営体制の再編・組織強化支援
営業・販売戦略、バックオフィスの構造改革
グループ間シナジーの創出による成長加速