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【小岩井フードサービス】那須高原の恵みを未来へ―乳製品と共に歩む地域密着型企業の挑戦
小岩井フードサービス
平山昌広氏 インタビュー
那須高原の豊かな自然とともに、ホテル、レストラン、病院、幼稚園、ベーカリー、ケーキショップといった多彩な業種に、乳製品を中心とした業務用食材を提供してきた一社がある。創業は平成12年。乳業メーカーからの依頼をきっかけにスタートしたその企業は、少数精鋭ながらも、那須塩原という日本有数の酪農地帯の恩恵を受け、地域に根ざした事業を展開してきた。
震災やコロナ禍といった幾多の困難を乗り越え、なお成長を続ける背景には、創業者の「取引先様との絆を守り抜きたい」という強い信念と、常に時代の変化に対応しようとする柔軟な姿勢があった。今日、その企業はM&Aという新たなステージを迎え、多様なパートナーと共に、地域と共生しながら新たな挑戦に踏み出している。
このインタビューでは、創業から現在に至るまでの軌跡、苦境を乗り越えてきた経験、そしてこれからの展望について、取締役の想いを紐解いていく。
―本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、御社の事業内容についてお聞かせください。
弊社は那須高原を中心に、ホテル、レストラン、病院、幼稚園、パン屋、ケーキ屋など、さまざまな業種のお取引先様に対し、乳製品を中心とした業務用食材の卸販売を行っております。創業は平成12年、乳業メーカー様からのご依頼をきっかけにスタートいたしました。少人数ながらも、社員一人ひとりがそれぞれの役割を担い、力を合わせて業務に取り組んでおります。
那須塩原市は、本州で生乳の産出額が最も高い地域であり、観光と酪農が融合した自然豊かな環境に恵まれています。那須高原は四季折々の魅力にあふれ、特に乳製品は非常に美味しく、また首都圏からのアクセスも良好です。この地の魅力と共に、地域社会と連携しながら事業を続けてまいりました。
―御社の創業の経緯について詳しくお聞かせください。
私自身、もともと乳業メーカーで製造部門に従事しておりました。しかし時代の変化と共に、メーカーの販売部門が廃業することとなり、これまでメーカーが築き上げてきた取引先様との信頼関係を途切れさせることなく、事業を継承したいという想いから独立を決意しました。製造と物流の現場を経験した視点から、取引先様にご迷惑をおかけせず、安定した供給を続けることを使命として取り組んでまいりました。
―事業継続の中で、大きな困難にも直面されたと伺っています。
はい。創業から数年が経ち、ようやく業務にも慣れてきた頃、2011年の東日本大震災が発生しました。栃木県は福島県に隣接していることもあり、風評被害は私たちの想像を超えるものでした。震災は、壊れたものを直す、汚れたものを綺麗にするという“先の見える困難”でしたが、その後のコロナ禍は全く異なるものでした。目に見えないウイルスによる不安、先の見えない状況に、これまでにない葛藤を抱えたことを覚えています。
震災の前年まで、事業の売上は事業継承時のほぼ倍にまで伸びており、その成長を実感していた矢先の出来事でした。コロナ禍では、特に観光事業に依存する業態のため、売上は約50%減少しました。しかし、従業員一同が仕事量に応じた柔軟な働き方を提案し、休業や通常業務外の作業にも前向きに取り組んでくれたことで、この難局を乗り越えることができました。
(写真)大切な商品をお預かりする大型の保管庫
―その後、M&Aによる事業承継を決断された理由を教えてください。
物価高騰による消費の落ち込み、震災やコロナ禍の影響による融資返済の負担など、厳しい状況が続いていました。その中で、銀行担当者の方からM&Aのご提案をいただきました。当初は悩みもありましたが、山崎社長との面談で、これまで考えつかなかった販売方法の可能性や、未来への展望についてお話を伺い、この会社を託してみたい、そしてその先の未来を見てみたいと思い、決断に至りました。実際、他社とのM&Aは一切考えず、テイクオーバーグループ一択でした。
―M&A後、実際にどのような変化や手応えを感じられましたか?
事業継承による安堵感とともに、グループ会社の皆様からの多様かつ強力なサポートを実感しています。業務の無駄を省き、効率的な体制を整えることができ、また他業種の企業様との協力を通じて新たな知見や視点を得ることができました。現在は、グループ内での業務受託や商品の流通、新商品の開発にも力を入れており、既存取引先様への新たな提案材料としても大変有効です。従業員たちも私の考えに賛同し、変わらぬ姿勢で業務にあたってくれています。
―今後の展望をお聞かせください。
人口減少に伴い、企業の数も減少することは避けられない現実です。しかし、異業種間の交流から生まれるシナジー効果、M&Aによって個々の力を結集し、新たな可能性を創出することは、これからますます求められると感じています。弊社は製造業ではなく仕入販売業ですので、物価高騰には限界もあります。しかし、グループ企業との連携によって新たな販路や商品開発が進み、希望が見えてきた今、これから先の時代にどのように順応していけるのかを、引き続き見届けていきたいと考えています。
―最後に、これまで支えてくださった皆様へのメッセージをお願いします。
これまでの歩みを支えてくださった取引先様、地域の皆様、そして共に力を尽くしてくれた従業員の皆様に、心から感謝申し上げます。これからも那須高原という素晴らしい地域で、皆様と共に成長し、未来を切り開いていける企業でありたいと願っております。
■会社概要
会社名 | 有限会社小岩井フードサービス
所在地 | 栃木県那須塩原市黒磯6-61
設立 | 2000年11月6日
代表者 | 山崎智輝
資本提携先 | 株式会社テイクオーバー(2024年6月資本提携)
事業内容 | 乳製品(牛乳・ヨーグルト・アイス・チーズなど)の卸販売
主な取引先 | 那須塩原地区のホテル、旅館、飲食店
取扱商品 | 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズなどの乳製品
■株式会社テイクオーバーについて
「価値ある事業をなくさない」をコンセプトに、日本全国における中小企業の事業承継問題に真正面から取り組む、承継支援・経営再生会社です。後継者不在や経営の停滞により存続が危ぶまれる企業を対象に、実質的な承継・再生の実行者として介入し、企業価値の維持・向上、ひいては地域経済の活性化に資することを目的としています。承継後は再生チームが経営を担う当事者として、グループの知見や人材・資本力を用いて、企業が本来持つ潜在的な価値を引き出し、持続的な成長へと導きます。価値ある企業を一つでも多く、後世に繋いでいく。そのひとつの想いで、今後も活動を続けてまいります。
〈事業内容〉
飲食、食品製造、ペット、アパレル事業等
中小企業の株式の取得による事業承継
経営体制の再編・組織強化支援
営業・販売戦略、バックオフィスの構造改革
グループ間シナジーの創出による成長加速