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【UNCEPT】EC黎明期からの挑戦。M&Aによる新たなフェーズへ
株式会社UNCEPT
取締役 大賀将信氏
インタビュー
2007年、熊本の一角でひっそりとスタートしたEC事業が、今では海外にも展開するグローバルな存在となった株式会社UNCEPT / SUKAT。
アパレル店舗のバックヤードから始まった同社の歩みは、決して平坦なものではなかった。
試行錯誤の末にたどり着いた独自の運営体制、そして昨今のM&Aによる企業譲渡の決断には、ECの進化と経営の現実が交差するリアルがある。
本記事では、代表者にその軌跡と、譲渡に至るまでの意思決定、今後の展望について伺った。
■ 原点は、アパレル店のバックヤード。そこからすべてが始まった
—UNCEPT / SUKATという企業のスタート地点を教えてください。
2007年、まだECが今ほど主流になる前、熊本市内のアパレル店舗のバックヤードで、いわば“試しにやってみよう”という気持ちでEC販売を始めました。当時は別会社の一部門という位置づけでしたが、少しずつ手応えを感じるようになり、2009年には法人として独立。以降、本格的にEC専業としての道を歩み始めました。
—どのような事業戦略で拡大されていったのでしょうか?
2015年頃から、商品の仕入れ、在庫管理、カスタマー対応、発送業務までをすべて内製化する「ワンストップ運営」を確立しました。これにより業務効率が大幅に向上し、利益率も向上。そこから一気に成長のスピードが加速しました。
■ 順風満帆の裏で、5年に一度やってくる“試練”も
—これまでで印象的だった苦労や転機はありますか?
実は約5年周期で「しんどいな」と感じるような局面が訪れています。具体的に何があったか、今では細かく思い出せないほどですが、それだけにその都度乗り越えてきた証拠だとも思っています。不思議なもので、辛い経験というのは、1年も経つと“なんかそんなこともあったな”くらいの記憶に変わっていくんですよね。
—苦しい経験を乗り越えることが、企業体力になっていると。
そう思います。逆境の中でも何とか踏みとどまり、少しずつ改善を積み重ねてきたことで、今の土台ができました。
■ 「価値を知る」ために始まったM&A相談
—M&Aによる事業譲渡の検討は、どのようなきっかけだったのでしょうか?
もともとは「会社の価値を知りたい」という純粋な関心から、3年ほど前に仲介会社へ相談を持ちかけたのが始まりです。最初から譲渡ありきではなく、あくまで参考程度のつもりでした。
—では、そこから考え方に変化が?
はい。いくつかの仲介会社と話をする中で、「譲渡=終わり」ではなく、「譲渡=始まり」なのだということに気づきました。
譲渡先によっては、当社の技術・ポジションをより強化できる可能性があり、むしろ新しいステージに進むための手段になりうると実感しました。
■ 円安・原価高騰という現実が迫る中で
—事業環境の変化も、意思決定に影響したのでしょうか?
大きな影響がありました。特に近年の円安は、海外仕入れの比率が高い当社にとって、直接的なダメージでした。原価の上昇が利益率に直結し、かつてほどの収益性を保つことが難しくなっていました。
—環境変化の中で、譲渡の選択をポジティブに捉えたと。
はい。テイクオーバー社との連携により、安定した経営基盤が築けるだけでなく、コスト面でもスケールメリットが期待できます。苦しさからの“逃げ”ではなく、“変化への適応”という感覚に近いです。
■ テイクオーバー社と進む、次のステージ
—譲渡先として、テイクオーバー社を選んだ決め手は?
大きな要因は、グループ企業の多様性と柔軟性です。業種を問わず、さまざまな企業が参加していて、それぞれに強みがあり、尊重し合っている。
その中で自社が果たせる役割や、他社と生まれるシナジーを想像したとき、自然と「ここでなら、さらに前進できる」と確信できました。
—譲渡後の変化はどう感じていますか?
元々効率的な経営を心がけていましたが、グループインしてからはそのスピード感が一層高まりました。各社のナレッジやノウハウを共有できるのも大きな強みで、日々学びと刺激があります。
■ EC技術を武器に、グループ全体の底上げを担う
—現在、UNCEPT / SUKATとしての事業はどのような形で継続されていますか?
EC事業は引き続き継続しています。加えて、当社の強みであるEC運営のノウハウを、グループ各社へ提供する取り組みも始まっています。
サイト運用や業務効率化の支援、ツールの導入支援などを通して、グループ全体のオンライン販売力を底上げする役割を担っています。
—今後の展望について教えてください。
中長期的には、当社の経験を活かしてグローバル展開にも貢献していきたいと考えています。貿易業務や海外向け販売の知見など、グループの中で横断的に使っていただける体制を作りたいですね。
大切にしてきた「組織力」を残しながら、グループ全体の成長の一助になれたら嬉しいです。
「変化を恐れず、むしろ変化に価値を見出す」
UNCEPT / SUKATの歩みは、ECの激動期を走り抜けた挑戦の記録であり、企業としての柔軟な進化のモデルケースでもある。
経営環境の厳しさや、時代の波に翻弄されるリスクを前向きに捉え、自社の価値をより広く活かす道を選んだ決断力。
その根底には、ひとつの経営哲学——「企業の価値は、残してこそ活きる」という信念があった。
テイクオーバー社との新たな歩みの中で、UNCEPT / SUKATはこれからも、世界中の“今すぐ欲しい”に応える存在であり続けるだろう。