事業継承した企業の声

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【六左衛門】何事にも、まずはチャレンジさせていただける

釜めしと串焼き 六左衛門
田中啓元 店長 インタビュー

東京都国分寺市で、長年地域の人々に親しまれてきた釜めしと串焼きの店「六左衛門」。今回お話を伺ったのは、現場の最前線で店舗運営を担う田中啓元(たなか・ひろもと)店長。16歳でアルバイトとして同店に立ち、その後いったん外の世界へ。ふたたび「六左衛門」に戻り、店長として再び厨房に立つ現在までのストーリーには、ただの飲食店という枠を超えた、人と人との絆と挑戦の歴史がありました。


—まずは、「六左衛門」について教えていただけますか。

私たちの店舗は東京都国分寺市にあります。昭和の趣が残る古民家風の空間で、釜めしと串焼きを中心とした和食を提供しています。

素材には特にこだわっていて、全国の生産地から仕入れる厳選食材に加え、地元で採れる野菜「こくベジ」も積極的に使っています。地産地消の姿勢は、味だけでなく地域への敬意も込めていますね。

—国分寺という場所ならではの特徴もありますよね。

はい。都内とは思えないほど自然が残っていて、農業も盛んです。今でも直売所がいくつもあり、休日には地元の人や家族連れで賑わっています。

最近では新しい住宅街も増えていて、若いご家族が移り住む流れもあります。古くからの住民と新しい住民が自然と混ざり合う、穏やかで心地よい空気感のある地域です。

—そんな国分寺で、店長ご自身が「六左衛門」と出会ったきっかけは?

16歳の時、アルバイトとしてこの店に入りました。当時は右も左も分からず、ただ一生懸命働いていましたが、次第にこの店の空気感や、お客様とのふれあいに魅了されていきました。お客様が料理を前にして笑顔になり、「美味しかったよ」と言ってくださる。そんな時間が、何より嬉しかった。

一度は別の仕事で社会に出ましたが、やっぱり六左衛門の空気が忘れられなかったんです。だから戻ってきました。この店は、私にとって“ただの職場”ではなく、人生の土台みたいなものですね。

 


(写真)テレビの撮影などでも使用される広々としたテーブル席

—店長として、特に大変だった時期はいつですか?

やはりコロナ禍です。緊急事態宣言や営業時間の制限、酒類提供の停止など、飲食店は真っ先に制限されましたよね。時には、「開けてるなんて非常識」といった空気まで流れて……正直、悔しかったです。もちろん感染拡大は防がなければいけない。でも、まるで飲食店が“悪者”であるかのような世間の目は、本当に辛かったです。

—それでも、お店を守り続けた。

立ち止まっていたら、お客様とのつながりが消えてしまう気がしたんです。だから、できることは全部やりました。

テイクアウトを拡充し、Uber Eatsや出前館を導入して、できるだけ多くのお客様に「変わらずここにいます」と届ける努力をしました。スタッフも一丸となって支えてくれて、今思えば、あの時間がチームの結束を強めたとも言えます。


(写真)人と人が交わる場所。カウンター席には、あたたかい会話と笑い声が似合う

—事業承継のタイミングでは、不安もあったのではないでしょうか?

正直ありました。オーナーが変わるというのは、現場にとって大きな出来事です。どんな経営方針になるのか、現場の声が届くのか、最初は見えない部分が多くて……。でも、山崎代表と初めてお会いしたときに、その不安はすぐに消えました。とても明るくて気さくな方で、何より「どうしたら現場が働きやすくなるか」を本気で考えてくださる姿勢に、安心しました。

—運営体制はどのように変わりましたか?

私よりも若い世代のマネージャー陣が増えました。最初は価値観の違いに戸惑う部分もありましたが、むしろその若さがいい刺激になっています。新しいメニューや施策を提案したときも、「やってみましょう!」とすぐに背中を押してくれるんです。結果がどうであれ、挑戦を否定せずに受け止めてくれる環境は、本当にありがたいです。

—これからのお店の方向性について、どのように考えていますか?

創業当時から通ってくださっているお客様の期待には、これからも応え続けたいです。いつ来ても変わらない“ほっとする味”、それは絶対に守りたい。その一方で、時代やお客様のライフスタイルに合わせて、料理の提供方法やサービスの形は進化させていきたいですね。SNSを使った情報発信なども、これからもっと取り組んでいくつもりです。

—将来的なビジョンはありますか?

「六左衛門」の魅力は、何といっても丁寧に炊き上げた釜めしと、手間を惜しまない串焼きです。こうした味を、国分寺にとどまらず、もっと多くの人に知っていただきたい。地元以外でも“六左衛門の味”を体験できる機会をつくっていけたら、と考えています。


「まずはチャレンジしてみましょう」と背中を押してくれる環境。
そこに甘えることなく、丁寧に、誠実に、お客様と向き合い続ける田中店長の姿に、「六左衛門」という店の本質がにじみ出ていました。

変わらない味を届け続けることは、簡単なようでいて難しい。
それでも「守るもの」と「変えるべきもの」を冷静に見極めながら、現場で汗を流す姿に、飲食という仕事の誇りと未来を感じさせてくれるインタビューでした。


■会社概要

株式会社R
釜めし串焼きの六左衛門
〒185-0005 東京都国分寺市並木町2丁目5−2
 042-324-9567


■株式会社テイクオーバーについて

「価値ある事業をなくさない」をコンセプトに、日本全国における中小企業の事業承継問題に真正面から取り組む、承継支援・経営再生会社です。後継者不在や経営の停滞により存続が危ぶまれる企業を対象に、実質的な承継・再生の実行者として介入し、企業価値の維持・向上、ひいては地域経済の活性化に資することを目的としています。承継後は再生チームが経営を担う当事者として、グループの知見や人材・資本力を用いて、企業が本来持つ潜在的な価値を引き出し、持続的な成長へと導きます。価値ある企業を一つでも多く、後世に繋いでいく。そのひとつの想いで、今後も活動を続けてまいります。

〈事業内容〉
飲食、食品製造、ペット、アパレル事業等
中小企業の株式の取得による事業承継
経営体制の再編・組織強化支援
営業・販売戦略、バックオフィスの構造改革
グループ間シナジーの創出による成長加速